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作業療法士とは
作業療法士は、患者さんが持っている「自分らしさ」とは何かを想像し、「自分らしい」人生を送れるよう支援する仕事です。「自分らしさ」は個人によって異なりますので、作業療法士が行う支援も患者さんの数だけ存在します。ですから「作業療法とは?」と聞かれたとき、明確な答えや正解を出すことは難しいのです。
このページでは、5人の作業療法士が自分なりの職業観、仕事の醍醐味、奮闘記をつづっています。これは作業療法のほんの一部分に過ぎません。しかし少しでも作業療法について興味を持っていただく機会になればと思っています。
崩れゆく記憶のアルバムと共に
老年期障害の作業療法
甲斐 晶子さん
■私の作業療法
私はデイケアで働いています。そこには認知症を持ちながらも、自宅で生活を続けられている方々が来られます。
認知症とは、人生というアルバムから、一枚また一枚と写真(記憶)が消えてゆく病気でもあります。自分の記憶が消えるということは、自分の存在が消えてゆくということ・・・・。そんな不安や恐怖から、認知症の様々な症状が現れるのです。
作業療法士は、そんな方々が安心して、「自分らしく」過ごせるための援助をします。人生を通じて築き上げられた「自分らしさ」とは、料理や洗濯物干しなどの家事活動かもしれませんし、編物や絵画などの趣味活動かもしれません。
そんな様々な作業を共に行うことは、失くした写真(記憶)を共に探すことでもあり、残された写真(記憶)について共に語らうことでもあります。崩れゆく記憶のアルバムに寄り添い、最後までその方らしい人生を送れるよう作業療法士は汗を流すのです。
共に行う作業の中では、「さすが人生の先輩だなー」と感じることがあります。長年の経験から得た貴重なお話を聞くこともあり、私たちの方こそ教わることが多くあります。
また、作業を通じて心と心が通じ合えたと思える事があります。 たとえ年齢は離れていても、一人の人間として心が通じ合えたと思えた時は、この仕事を選んでよかったと一番思う瞬間です。
しかし、悩むことも多々あります。長い人生を歩んできて認知症になった人たちと向き合う時、その方がどんな生き方をして、どんな想いをもって生きてきたのか知る必要があります。
しかし、私のような若い人間が、簡単に理解できるわけがありません。それでも記憶が失われていく不安や恐怖など様々な気持ちを受け止め、最後まで「自分らしい」人生を送れるように、その人を感じて知ろうとする努力、考える力が求められます。
語られる言葉が真実ではないことや、言葉が失われている場合も多いため、その人を知ることはとても難しいことです。また、本人だけでなく支える家族の想いを知ることも大切ですが、言い表せられない悲しみや辛さに直面することもあります。
そうした、人のことや物事に対する想像力を必要とする仕事でもあります。教科書には載っていない想像力の磨き方。 日々、認知症の方々との関わりを通して学び、奮闘している毎日です。