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私の生きがい Quality of life
作業療法士は、みんなのQOLを知りたい!
QOL(Quality Of Life)は人生の質、生活の質、生命の質と訳されます。生活、人生、生命をいきいき輝かせるためには、‘自分らしく生きる’ことが必要です。
しかし不運な事故や病気によって‘自分らしさ’を発揮できない方もいます。我々作業療法士は、そのような方々へ‘自分らしさ’をもう一度感じていただくための支援を行います。ですから作業療法士は、十人十色の‘自分らしさ’を発見、尊重することが大切なのです。
このページでは、エネルギッシュにQOLを輝かせている方を紹介しています。
あなたのQOLってなんですか?
ギターと主婦と作業療法と 宮崎リハビリテーション学院 教員 道本純子さん
現在、仕事と家庭で慌しい日々を送っている。昨年4月からの作業療法士養成校教員という仕事に就き、同時に宮崎県作業療法士会事務局長という仕事も加わった。新たな仕事がこんなにも膨大で、複雑で、神経をすり減らすものとは考えてもいなかった。一方、家庭経営もずいぶん気力と体力を必要とし、家事は手を抜いているのに要領が悪く時間がかかる。わが子の躾は全く思い通りにはいかず、毎日半端なく腹が立つことが多い。時間的にも精神的にもいっぱいいっぱい……。
のはずなのだが、もうひとつ自分には音楽がある。いつの日からだろう、テレビのなかで牧伸二という人が抱えていたウクレレに幼い私の心は強く惹かれていた。何を勘違いしたのか、猛烈にギターが欲しくなり、その内、部屋中に並んだギターを握っては消え、また1本握っては消え…という夢を度々見るようになった。そして、ギターを買ってもらったのは小学5年生のときだった。訪れた楽器店の店員に、どこのメーカーのどんな種類のギターだとか…多分説明されたのだろうが、ウクレレとギターの区別もつかない親子には全く印象に残らなかった。当時はさほど遊びの種類も習い事もなかったこともあり、私は子供らしくギターにのめり込んだ。1冊の教本だけを頼りに、少なくとも1日5、6時間は練習に没頭した。しばらくしてコードというものの存在を知ってからは、雑誌の付録のコード譜をみたり、テレビの前にカセットテープレコーダーを置いて録音したヒット曲を聴きながら練習?をしたりというか、当時の感覚では弾いて歌って遊んでいたと言ったほうが近いだろう。そして中学2年、大学の軽音楽部定期コンサートでの弾き語りが初ライブだった。その後プロを目指して、オーディションに応募してみたり、バンドを組んでみたり、逆になにもしない時期があったりと、音楽と近づいたり離れたりしながら現在に至っている。
普段は楽器に触る時間などないが、イベントやライブが決まればどんなに忙しくても時間をひねり出して練習している。以前、練習法をアドバイスしてくれた友人に「でも忙しくて時間が取れないし…」と言い訳をしてしまったことがあった。自分的には『助けて欲しい』という甘えたニュアンスがあったのだろうが、友人からの返答は「だったらやめたら?」というものだった。私が著名なミュージシャンならともかく、下手さに嫌気がさしてやめようが他人には関係ないのだ。それからは自分に与えられた時間なのだから、失望にするも喜びにするも自分次第だと思うようになった。やはり無様な演奏は恥ずかしいし、お客様に申し訳ないし、共演者にも迷惑がかかる。ライブはいつも緊張するし、演奏が完璧であったことは一度もない。大恥をかいてしまったことも数知れず。しかしなぜか『もうイヤだ!!』ではなく、『次回こそは!!』と思えるのだ。ステージに上がると少しだけ普段と違う気持ちになる事が心地良いのか、音楽がよっぽど好きなのか、ただの負けず嫌いなのか、そう思える理由は分からない。しかしその気持ちが、塩をかけた青菜のようにクタクタになった身体を練習へと突き動かしてくれることは事実なのだ。そして気が付けば結構な年月が経ち、音楽を通じた知人も増えていた。そんな繋がりができると、また次のイベント出演のお誘いがいただけたりする。そして私は練習を余儀なくされ、演奏寿命が延長される。たいした演奏は出来ないのに、本当にありがたいことである。だからこそ、もっと上手くなりたい。もっとカッコ良く、人の気持ちを共鳴させるような演奏がしたい。そう思えるうちはまだ音楽を続けられるかなと思う。
こんな風に書くと、私がもの凄くタフな人間に思われてしまうかもしれないがそうではない。なにもかもうまくいかず、疲ればかりが残り、『何やっても中途半端だ、欲張りはやめて、どれか一つにしないといけないな…』と思い落ち込むことは結構ある。しかし、『私は基本的に怠け者だ。時間が空くと空いた分だけダラダラしてしまう。こういう自己管理の苦手な人は、ずっと強い風の中でバタバタとあおられていた方が動きやすい。では、今の環境は私にあっているではないか?!』と良いほうに解釈して浮上する。実際、今は作業療法の仕事も、家庭も、音楽も大切な私の一部であり、どれが欠けてもバランスが崩れてしまうのだ。それぞれの意味合いも違うし、互いが個々のストレスを打ち消しあったり、ここで上手くいかないときはここで自己実現…という具合に自分が元気になるチャンスを増やせているのかもしれない。できるだけ長くこのバランスを保ち、いつの日か自然に子供が巣立ち、仕事が終わったとき、音楽が残っているとありがたい。
進路を決めないといけない時期にある娘たちは、私が何か言うと、「まあ、お母さんは結構好きなように生きてるもんね。」と、ほめ言葉とも批判ともいえないコメント。私の生き方は娘たちにとって、あまり参考にならないらしい。いろいろ愚痴をこぼすことはあるが『あの頃は良かった』なんて一度も思ったことはないし、私の生活の質(QOL)は割と良いほうではないだろうか。そんな生き方を許してくれる、私の周囲の人々に深く感謝したい。
略歴
道本 純子 高鍋町出身
国立療養所呉病院附属リハビリテーション学院卒業後、様々な作業療法分野で勤務。現在、宮崎リハビリテーション学院勤務。FMラジオの人気番組でパーソナリティーを務めた経験も持つ。
2009年04月21日【3】
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