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作業療法士の力
現場の作業療法士がどんな場面で「力」を発揮しているのか。ぜひご覧ください。
さまざまな「手」との出会い -田代夕貴さん
私の働いている宮崎善仁会病はER(Emergency Room;救急救命室)のある救急病院です。365日24時間体制で診療を行っており、毎日たくさんの患者様が救急搬送されてこられます。リハビリテーションの対象になる方も受傷後早期の方が大半を占めています。
私達作業療法士は“不慮の事故”などで腕や手に骨折や外傷を負った整形外科疾患の方を主に担当しています。
作業療法士として働き出してから、様々な“患者様の手”との出会いがありました。私たちは普段、健康であれば“手の存在”を意識することはないでしょう。しかし、意識しながら手の働きぶりを見てみると、実に様々な作業を生み出してくれていることに気付かされます。日常生活の作業についてはもちろんですが、仕事や趣味においても、片腕いいえ指一本でさえ不自由であれば、満足にできないことばかりではないでしょうか。
患者様一人ひとり、異なる人生を歩んでいるからこそ、その手にも各々異なる役割が与えられています。例えば、バスケットボールの試合を控えている高校生の“手”、家事をして家族を支えるお母さんの“手”、大好きなギターやピアノを弾くための“手”、農業を営み土に触れ、力仕事をする大きな“手”・・・・。作業療法士は、歴史の詰まった“患者様の手”と向き合い、同じ目標に向かってリハビリをしていきます。元通りに手を動かせることだけでなく、ケガによって喪失した手の機能を、装具という器具によって補うことを目指すこともあります。「何が自分にとって一番大切か、何ができないと困るのか…」、作業療法士は患者様と共に解決方法を考える仕事だと思います。
私は作業療法士として、患者様の“手”に触れさせてもらうことで、同時にその方の人生にも少しだけ触れているのだと思います。色々な感性、価値観、人生観を知ることができ、それらはこれから出会う患者様のリハビリや自分の人生の糧になっているようです。作業療法士としても、人間としても、まだまだ未熟で悩むことも沢山ありますが、私はこのような経験ができる作業療法士という仕事が大好きです。これからも知識・技術はもちろんですが、患者様に寄りそえるような感性を磨いていきたいです。
2011年05月08日【19】
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