作業療法士の力
現場の作業療法士がどんな場面で「力」を発揮しているのか。ぜひご覧ください。
地域復帰に向けた調理訓練
精神科に入院していた方が、退院するためには様々なハードルがあります。たとえば病院ではできていたことが、退院先ではできないことがあります。それには、病院と退院先の環境の違いが大きく関係している場合があります。病院でできていることを、退院先でもできるようにするためには、病院に居ながら自宅の環境を想定することが大切だということを学んだケースについてお話します。
Aさんは、退院して生活をするため、一人で調理をできるようになることを目標として調理実習を行っていました。しかし施設内の調理室は広く、実際の退院先のキッチンとは、かけ離れた環境です。Aさんは調理室の広いスペースに道具や食材をすべて出して作業を行っていました。しかし狭いキッチンで道具や食材を全て出し調理を行うことは難しいのが現状です。そこで狭いキッチンを想定して必要なときに道具・食材を出し、必要が無いときは片付けるという手順をAさんと話し合いながら決定していきました。また退院後の調理をイメージしていただくため、一緒に退院先に行き、退院先のキッチンを使って調理実習を行った方もいました。より現実場面に近い環境を想定し調理訓練を行ったことで、退院後の自分の生活をイメージでき、退院先への生活へスムーズに移行できたのではないかなと感じました。Aさんは今でも調理を行いながら退院先で生活することができています。このように生活に密着した関わりができることも作業療法の魅力です。
私は現在、精神科デイケアで、住み慣れた地域で生活をしている方へ作業療法を行っています。そのような方の中には病状が不安定となり、入退院を繰り返す方もまれではありません。住み慣れた地域で生活し続けられるよう、臨床心理士らとも協力し、病気とうまく付き合う方法を提案していきます。
病気とうまく付き合う方法を教えます!
病気のメカニズム(仕組み)や特徴
病気が再発する時ときの兆候
薬の作用・副作用
ストレスとの付きあい方 など
また自分のものの考え方や受け取り方を知り、より広い視野で考えられるようになることが病気の再発予防へと繋がっていきます。そのため病気と上手く付き合う方法を指導した際に使用した資料を用いて、一緒に振り返りをします。実際にこのような取組みの結果、病状が落ち着いた方もいました。
これでいいのだろうかと感じながら仕事をすることもありますが、患者様が住み慣れた地域で楽しく生活を送っていただけるよう、患者様と一緒にその方法を探していきたいと思います。
2009年06月27日【16】