作業療法士の力
現場の作業療法士がどんな場面で「力」を発揮しているのか。ぜひご覧ください。
自動車運転再開への支援
脳卒中などで入院している患者様の中には、退院後に再び自動車を運転したいと希望される方がいます。その理由は、仕事や通勤、家族の送迎、買い物に行く等の移動手段や、家族と遠出をする等のレクリエーション目的など様々です。
運転をするには、ハンドルやアクセル・ブレーキの操作等の手足の動きに加え、左右の標識や歩行者、他車への気配り、運転に集中する注意力、危険回避の判断、標識の理解といった能力が必要となってきます。この能力は脳の機能によって円滑に行われます。しかし脳卒中の患者様は、体の半分が麻痺してしまうだけではなく、脳の機能まで障害されてしまうことがあります。その為、患者様が運転を行うことを希望された場合、運転が可能かどうかを検査する必要性があります。これらは、両手足の動きが障害される脊髄の病気を持つ患者様も対象となります。
当院では、患者様の運転再開に向けて以下の対応を行っています。まず、手足の運動機能、筋力、体力等の身体面の運動機能の検査や、注意力、判断力、理解力等の目に見えない脳の機能を検査します。そしてそれらだけでは、運転が正しく行えるかの判断が難しい場合では、教習所に協力してもらい、実際に車に乗り運転を行います。教習所では運転技術に詳しい教官と共に私達作業療法士も患者様の運転する自動車に乗ります。教官は主に運転技術的な面の確認をしますが、私達作業療法士は、技術的な面に加えて注意力や判断力、理解力等の脳の機能の障害が、運転に影響していないかを確認します。例えば、注意力が欠けている点がみられる際は、教習所の教官に事前に連絡し、横断歩道や交差点など注意を必要とする場面を多く設けたりするなど、教官と協力して、患者様が適切に判断できるかを確認します。
運転後は、実際の運転と病院内で行った検査を合わせて、運転が可能かどうか作業療法評価として判断し、主治医に報告します。運転が可能な方には必要であれば、改造車の説明や、福祉制度の話を説明したり、運転前には運転免許センターに相談することを勧めたりと運転再開にむけて慎重に取り組みます。
作業療法士は病院の中で患者様のリハビリをするだけではなく、退院後の生活に応じて、他機関の方とも協力して患者様の生活を支援していきます。
2009年06月27日【15】
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